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ノンフィクションの体をなしていない:暴走老人! [社会]


暴走老人!

暴走老人!

  • 作者: 藤原 智美
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 単行本



一時期評判になっていたみたいなので、読んでみたけど……
久しぶりにひどい本に出会った。


【目次】
序章 なぜ「新」老人は暴走するのか
第1章 「時間」(暴走する老人たち、待つことをめぐる考察、変容する時間感覚、ネットワーク)
第2章 「空間」(凶器の選択、独居する空間、膨張するテリトリー感覚)
第3章 「感情」(透明なルール、丁寧化する社会、警笛としての新老人)


本書を読みながらずっと、妙な既視感にとらわれてずっともやもやしていた。
終盤になってやっとその正体がわかった。大学受験の時にやったセンター試験の「評論」の様な文章なのだ。言いたいことはわかるけれども、しっかりとしたデータに裏付けられていないので、思い込みのように見えて説得力がない。
本書を読むと、筆者の思い込みを延々と聞かされたような気分になってしまう。

本書のあらすじは、最近の老人は急にキレることがある。ただし、老人がキレる気持ちはよくわかる。というところ。事例は複数挙げられているが、根本的な原因を挙げるでもなく、ひたすらその気持ちはわかると言う老人擁護を繰り返す本なのだ。

たとえば、『第2章「空間」3膨張するテリトリー感覚』の中で、筆者はゴミ屋敷や排泄物による迷惑行為で周囲に迷惑をかける老人の例を挙げた上で、臭いに関する感覚が、昔とは違ってきているのでそれに対応できない老人も存在すると言う形で締めくくる。
むしろ清潔を主張する周囲の方がおかしいと言いたいような書きっぷりで、対立する権利についての考察もなしに、昔はよかったと言うおきまりの思想を一方的に書いて終わりにしている。
本章の最後を引用しよう
ゴミ屋敷の主は、その場所もわが物顔で使用する。汚れた布団を干し、木を植え、私物を放置するのだという。それは、かつて家族が水路を自由に使っていたころと、同じ感覚のままだからではないだろうか。このやっかいな人物の中で空間意識は変化していないのかもしれない。かつては身勝手でちょっと困った人、くらいの存在が、現在では反社会的な存在にまでなってしまう。変わったのは、周囲と社会とも言える


ひたすらこういった筆者の思い込みによる主張が、いろいろな面から繰り返される。
筆者も後書きでこういっている。
今回、素材として使ったのは取材で拾ったいくつかのエピソードとニュース記事、そして、私の実体験です。
現代老人の暴走に触れた本はなく、適切な分析も見あたらないなか、そこに発生した事件や出来事に想像力でわが身をおきなおし、思考する。それが小説家としての私の方法でした。

自分で、想像で「ノンフィクション」を書いたことを告白して、何ら恥じるところがない。

インターネットが普及するまでは、出版・書評は選ばれた人の独占的権利で、芥川賞作家である筆者がこのような本を書いても、よくできた本としての評価を得られたかもしれない。
しかし、この本で書いたような文章をネットで公表すると、単なる調査不足、思い込みとしてまともな論説としては扱ってもらえないだろう。テーマに直接触れた本が無いからと言って、思い込みだけで書かれた主張が価値を持つことはない。思い込みだけで書かれた主張はそれが正しいことも証明しないし、対立する意見に問題があることも証明しない。ただただ、自分の意見を言うだけなのでまさに便所の落書きと変わらない。
残念ながら本書は、現代のノンフィクションとしては落第である。

私のように、今の老人は恵まれた時代に生きた社会的強者であり、その老人が若者に対してキレるのは弱い者いじめ以外の何者でもないと言う主張を抱く者は、本書を読むと根拠のない反対意見を延々と繰り返されることになるので、非常に忍耐力を要する。

昭和30年生まれの筆者は、出版当時52歳。本書には、時代遅れの人が書いた老人擁護本としての価値しかないだろう。タイトルはキャッチーで、表紙も悪くないだけに売れるのはよくわかる。でも、内容がこれじゃブックオフの常連になってるんじゃないかな……。

☆★(☆一つ半)

他のBlogの反応はこちら等。
(期待はずれな内容としつつも好意的なエントリ)
http://plaza.rakuten.co.jp/anzu99/diary/200810090000/
(内容に好意的なエントリ)
http://kuramae-japan.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post_6f49.html
http://blogs.dion.ne.jp/hanaangya/archives/6266649.html
(ニュートラルな評価のエントリ)
http://blogs.yahoo.co.jp/hyxsy969/56911898.html
http://plaza.rakuten.co.jp/chikashitsu/diary/200806260000
(内容に批判的なエントリ)
http://d.hatena.ne.jp/Clif/20080916







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