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姿の見えないアンバランスな法律:どこまでやったらクビになるか―サラリーマンのための労働法入門 [法律]





のっぺらぼうみたいに顔が見えない。
これが労働法という法律の実際である。
個別の事情を見ると実に場当たり的だ。

【目次】
ブログ―ブログで社内事情を書いている社員がいてヒヤヒヤしています。あの社員はクビにならないのでしょうか?
副業―会社に秘密で風俗産業でアルバイトをしている女性社員がいます。法的に問題はないのでしょうか?
社内不倫―社内不倫しています。これを理由にクビになる可能性はありますか?
経費流用―私用の飲食代を経費として精算したのがバレてしまいました。どれくらいの額だとクビになりますか?
転勤―会社から転勤を命じられました。どういう事情があれば拒否できますか?
給料泥棒―まったく働かない給料ドロボーがいます。会社はこういう人を辞めさせることはできないのでしょうか?
内部告発―会社がひどい法令違反をしています。内部告発をした時に自分の身を守る方法はありますか?
合併―会社が他の会社と合併することになりました。合併後は給料が下がりそうなのですが、そんなことは認められるのでしょうか?
残業手当―上司に言われていた仕事が勤務時間内に終わらずに残業しました。こういうときでも残業手当をもらえますか?
新人採用―半年の試用期間で「採用失敗」が明らかになった新入社員がいます。会社は彼を本採用することを拒否してよいのでしょうか?
セクハラ―「仕事の話」を口実に上司からしつこく夕食に誘われています。これってセクハラではないですか?
過労死―過労自殺した同僚がいます。遺族に最大の金銭的保障をしたいのですが、会社に要求できるのはどんなことですか?
労災認定―自分のうっかりミスで仕事中に大けがをしました。労災保険は適用されますか?
定年―会社の定年は65歳なのですが、70歳まで働きたいと思っています。定年制の廃止を会社に要求することは出来ますか?
喫煙問題―職場が未だに禁煙になっていません。これって法的な問題は無いのでしょうか?
痴漢―痴漢で捕まってしまいました。会社にバレたらクビになりますか?
妊娠出産―妊娠を報告したところ、上司が冷たくなりました。妊娠中の社員の権利について教えてください。
経歴詐称―経歴を低く偽っていたことがバレてクビになった公務員がいました。経歴を低く偽ることの何が問題なのでしょうか?


本書は労働法上問題になると思われる事例に対して、神戸大法学教授の筆者が回答していく形式を取っている。その形式であるが故に、労働法のアンバランスさ、一貫性のなさが明らかになってしまっている。

そもそも労働法ってどんな趣旨の法律だと思われるだろう?
会社側から弱い立場の労働者を守る――そう思う人が多いだろうし、私もそう思っていた。
しかし、それは労働法の一面にしか過ぎない。
本書で取り上げられている事例の中では、試用期間後の採用はほぼ強制されている、給料泥棒でもクビには出来ない、痴漢のような社外の犯罪を解雇自由にすることは難しいなどの事例は立場の弱い労働者を守るという方向が貫かれている。

反面、会社の自由・裁量権を広く認める方向も目立つ。
本書で取り上げられている事例の中では、社員の生活を実質的に壊すことになっても転勤させることが出来る、職場での禁煙は必ずしも義務ではない、残業手当こそ出さねばならないが残業させること自体は比較的自由といった事例については、会社側の裁量を広く認める方向に判断されている。

本書を読んで感じられるのは、労働法の方向性が見えてこないと言うこと。
ひいては、我が国が労働・経済活動を通じてどのような国を目指したいのかが明らかにならないことだ。

池田信夫氏や城繁幸氏が主張する世界のように、労働者の保護を最小にして会社の裁量を広く確保し、自由な経済活動によって活力を確保し、経済的な発展を目指したいのか。
雨宮処凛氏や湯浅誠氏が主張する世界のように、労働者を徹底的に保護して低成長、低収入だがのんびりと生活しやすい国にしたいのか。

労働法の欠点として、残業手当や過労死認定など、法律に書かれたことの実効性が担保されていないことはよく言われる。
しかし、それ以上の欠点は、労働法がどう行った国を目指して制定されたかが全然見えてこないことだ。
本書は、ありそうな事例についてわかりやすく解説することで、結果として労働法の弱点がよく見えてくる。
非常に簡単に読むことが出来るので、働いている人なら、読んでみて損はないだろう。

☆☆☆★(☆三つ半)

他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://blogcq.livedoor.biz/archives/50796778.html
http://blog.livedoor.jp/s_kuri2002/archives/51512181.html
(微妙な評価のエントリ)
http://enyan.no-ip.com/alm-ore/archives/2008/08/post_979.html

労働法の事例集として考えると若干物足りない(新書だから当たり前だが)。
労働法を考えるきっかけとしては面白い。
そんな本だと思います。







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