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私たちは、子供に何を残して、何を残さないべきか:朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機 [社会]


朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機

朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機

  • 作者: 根本 祐二
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2011/05/25
  • メディア: 単行本



道路・橋梁、上下水道、公共建築物の老朽化について書かれた一冊。
現在、高度経済成長期に建築された公共インフラが寿命を迎えており、更新投資が必要なのだが、御存知の通り公共事業は目の敵にされているので、更新投資は行われていない。

その結果、近いうちに、橋梁の落下、公共建築物の崩壊などが多発し、使えない公共インフラが増えてくるであろうというのが本書の主張。
この主張が絵空事でない証拠に、東日本大震災では、震度5程度だったにも関わらず、東京・九段会館は一部崩壊して、事件になっている。

【目次】
プロローグ 崩壊のシナリオ
第1章 崩壊寸前の社会資本
第2章 莫大な額にのぼる更新投資
第3章 各自治体の更新投資をどう計算するか
第4章 各自治体の老朽化対策の実践例
第5章 崩壊させない知恵
第6章 どのように対策を進めるか
エピローグ 再生のシナリオ


本書が素晴らしいのは、公共投資の必要性を論理的に説明し、「今投資をしなければゴミの山が残る」という主張にもかかわらず、「今まで通りの投資を実行することは財政的・社会的に不可能」ということをはっきりと自覚している点である。

三橋貴明のように、景気を支えるための公共事業として、無制限に更新投資を行うべしという主張をするのではなく、今より少ない予算で維持管理を行い、子孫に対してほんとうに必要な公共インフラだけを残す施策が本書では示されている。
民主党が手垢をつけたせいで、”仕分け”の印象は悪くなったが、本書で示されているのはほんとうに必要な公共事業の事業仕分けのあり方である。

早くから都市化の始まった、首都圏・関西圏の中心部に住む人程、公共インフラの老朽化は肌で感じられているだろう。では、それをどうすればいいのだろうか?
三橋貴明のような非現実的な積極支出論や、(丸の内の郵便局を保存した)鳩山邦夫のような情緒論とは異なる、論理的な回答が本書には存在する。

さらに、本書は、実際の白書にそのまま使えそうな実務的な計算式が載っており、流用や検証に耐える作りになっているのも素晴らしい。私は建築業界のものでも官僚でもはないが、そうした業界の人なら、経費で買って会社に置いていても十分に使える(そして、その割には読みやすい)作りになっている。

これから10年の間に、公共インフラの老朽化による事故と、財政危機がよりはっきりとしたニュースに出るようになるだろう。
その時に出てくるインチキに惑わされないために、本書は学んでおくべき良い素材である。

☆☆☆☆(☆4つ)
他のBlogの反応はこちら。
http://tamahibi.blog122.fc2.com/blog-entry-696.html
http://d.hatena.ne.jp/wlj-Friday/20110628/p1
http://book.marunouchi-office.jp/recommend/003259.html
http://d.hatena.ne.jp/gati/20110712

いい本なんだけど、書評エントリは少なめ。
政治に深く関わる”文系”のジャンルで、本書は実務的な数字を出しているので、数字アレルギーの読者を逃してしまっているのかもしれない。
いい本なのに、勿体無い……。





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