So-net無料ブログ作成
検索選択

生活保護に頼らない精神は褒めるべきかもしれないが……。:彼女たちの売春(ワリキリ) 社会からの斥力、出会い系の引力 [社会]


彼女たちの売春(ワリキリ) 社会からの斥力、出会い系の引力

彼女たちの売春(ワリキリ) 社会からの斥力、出会い系の引力

  • 作者: 荻上 チキ
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2012/11/29
  • メディア: 単行本



生活が苦しく、売春に走ってしまう女性たち。
彼女たちを違法行為に手を染める犯罪者と見るか、筆者がそうしているように保護が必要な人達と見るかはそれぞれだが、従来の社会保障政策が届かない人々の存在があり、何らかの答えを出さねばならない問題だと言える。

【目次】
1章 社会的な引力・斥力―風俗・ワリキリ・精神疾患
2章 排除の果て、アウトサイドの包摂―虐待・ホスト・ドメスティックバイオレンス
3章 貧困型売春と格差型売春と―学歴、貧困、ハウジングプア
4章 母親としての重圧―離婚、中絶、シングルマザー
5章 全国ワリキリ事情―車、パチンコ、買春旅行
6章 3・11―地震、津波、原発事故
7章 ナナとの出会い―日記、メール、妊娠報告
8章 買う側の論理―喫茶、サイト、利用データ
9章 出会い喫茶のルーツ―自己決定、自己責任、自由市場


本書は、筆者が出会い喫茶・出会い系サイトを使って売春する女性たちに100名規模でインタビュー調査を行った結果がまとめられている。
世間一般が思っているように、手っ取り早くお金を稼ぐためという人もいるのだが、そうした人々はむしろ少数派。多くの人は、学歴や病気などで普通に働くことができず、病気・容姿・時間の問題などで水商売や風俗も務まらないため、唯一稼げる手段として売春に取り組んでいる。

病気で働けないなら生活保護を受給すれば良いと思うのだが、彼女たちは生活保護受給の方法も知らないし、NPOや行政は自分たちを避難し・取り締まる側だと認識しているため、そうした組織に頼ることがそもそも頭に浮かばない。親子二代でそうした環境にいる人達も少なからずいて、セーフティネットから見事に抜け落ちてしまっている。

私はどちらかと言うとリバタリアン的思想の持ち主だし、行政によろう保護よりは自助努力が基本と思うのだが、本書に出てくるような人々のような形で自助努力をすることは正しいことだとは思えない。
それでも彼女たちは知識や能力がないから生活保護も受けられない。「プレカリアートの憂鬱」のエントリでも感じたことなのだが、何かしらの能力不足で生活が苦しくなった人にはどのぐらいの補助を行うべきか。この問題は非常に悩ましい。

教科書的には、生活保護を与えつつ、お金の使い方やまっとうな職業に就くための職業訓練を与えるというのが答えなのだろうが、本書に出てくるような人々には"職業訓練"や"知識を与える"と言っただけで拒否反応を起こし、違法な稼ぎ(売春)に戻ってしまうだろう。
逆に好きでそうしているのだから放置すればいいかというと、治安の悪化や貧困の再生産を招いている以上、放置するのも社会的には問題だ。

本書を読んでいると精神を病んでいる人が多いことから、精神科医の活用がキーになるようにも思えるが、現状では精神科医による治療は標準化が進んでおらず当たり外れが大きいことやどうしても時間がかかってしまうことなどの問題があり、政策的に精神科医の活用を大々的に実施することは難しい。

このように、非常に難しい問題を突きつける本書。「これからの「正義」の話をしよう」の実戦問題として読んでみてはどうだろうか。

☆☆☆☆★(☆4つ半)

他のBlogの反応はこちら。
http://tamanegi.jugem.cc/?eid=1289
http://d.hatena.ne.jp/saka-san/20130330/p2
http://d.hatena.ne.jp/akehyon/20130203
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2013-01-26
http://d.hatena.ne.jp/fhn/20121207/1354872552
http://blog.peachcare.jp/?eid=1141774
保護すべき対象と見る人も、違法行為の常習者であり犯罪者と見る人もいる。
ただ、どっちの方法も今の彼女たちには届かない以上、新しいスキームを考えて対処しなければいけないのは間違いない。






nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(2) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 2

自称隊長

犯罪者とは思えませんが、と言って単純に支援を受ければまっとうな道を歩む方かといえばそうでもなさそうですね。

売春という割り切り方が楽な生き方だとは思えませんが、貧乏でもまっとうな道より、つらいけれど安易にお金を稼ぐことができる方法を敢えて選んでいらっしゃるのではないか?という時点で、ご本人が選んだ生き方だから、その考え方を変えない限り、生き方にも変化は生まれないのだろうと感じました。

ただ、暴力や虐待の犠牲となってその道を選ばざるを得なかった方もいらっしゃると思います。そういう方にとっては的外れで失礼な意見となってしまうことはご容赦ください。
by 自称隊長 (2013-05-04 09:03) 

book-sk

>自称隊長さん
コメントありがとうございます。
おっしゃるとおり、安易な生き方を選んでいる人が多いのだと思います。語弊を覚悟で言えばだらしない人々というか。

ただ、そのだらしない人々を放置する(当然治安の悪化や、食い物にするヤクザのような人々もついて回る)のがいいか、本人の意志に反しても矯正してまっとうな生き方をさせるべきか。

この問題にスパっと答えを出せる人は居ないと思います。品こそ無いですが白熱教室のテーマに出てきてもおかしくありません。

強いて言えば、キーとなるのは精神科医と経済成長で有るような気がしていますが……。
by book-sk (2013-05-10 22:06) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 2

メッセージを送る

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。