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六十歳代の逃げ切った世代も住んでる場所は悪いよね……。:ニュータウンは黄昏れて [小説]


ニュータウンは黄昏れて (新潮文庫)

ニュータウンは黄昏れて (新潮文庫)

  • 作者: 垣谷 美雨
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/06/26
  • メディア: 文庫



不動産関係のTwitterで話題になった一冊。
早速読んでみました。

物語の舞台は郊外バス便のニュータウン(モデルは多摩ニュータウン)。
バブルが崩れかかった90年台前半にニュータウンを中古で購入した一家が主人公。
5,200万円で購入(住宅ローンは年利6.9%で4,200万円)した4LDKだが今売却すると1,500万円にしかならない。
自主管理のマンションで今回理事が回ってきたのだが、40歳代後半の主人公一家は理事の中で2番めに若く、殆どは分譲当初に購入した70歳代後半の住人。

そんなニュータウンでの人間模様と事件を描くのが本書なのだが、筆者の実体験に基づいているだけあって非常に興味深い事例が多い。
・管理組合の理事長がボケていて同じ議題が繰り返される
・等価交換方式での建て替えはすべての事業者に拒否される
・子供の出来が悪い家庭は自主建て替えによる資産価値向上(多くの財産を残せる)に唯一の希望を託し、子供の出来がいい家庭は修繕による終の棲家を目指す意見対立。
・ニュータウンを脱出した主人公一家の娘の同級生二人だが、一人は練馬区の狭小邸宅、もう一人は板橋区の欠陥住宅。
・理事会の定年制が老人たちの数の力で可決され、若い住人は老人たちの奴隷状態に
・地方自治体へコミットする力が弱く、前向きな支援が得られない
などなど、非常に興味深いネタが展開され、綺麗に回収されている。
結論は人によってハッピーエンドと捉える人もいれば、救いのない結論だと捉える人もいる、パンドラの箱に残った希望状態の結論だ。

以下は、本書を読んで私の思ったことや、不動産関係Twitterで語られている結論への感想など。

(1)不動産を買ったのがいけなかった?
橘玲などが言うように、購入したからこそリスクに耐えられなかったのであり賃貸を続けるべきだった(一生賃貸にすべきだった)という感想を見かける。
個人的には、この感想には賛同できないです。

本書の主人公が問題のニュータウンを買った90年代前半から不動産価格が底を打つ2000年代前半まで約10年の期間がある。
本書の例だと、阿佐ヶ谷の賃貸(1LDK?)で第一子を産んだ夫婦が第二子を授かっても同じ所で住み続けると上の子が小学校に入る時点で常識的な生活をするならもっと広い家が必要になる。
そこで次の賃貸を探すとしても結局90年台半ばで短期の借家を除けばニュータウンと同レベルの距離でしか借りられないのでは無かろうか?確かにバブルが崩壊した90年代後半でもっと都心近くに借り換えられるのだが、小学校高学年・中学生の子供を抱えて転校を伴う引っ越しができるかというと……。

(2)とは言ってもファイナンシャル・リテラシーは低いよね?
6.9%の借り換えができない状況に追い込まれたファイナンシャル・リテラシーは確かに低い。
もっと言うならろくな貯金もないなら本書初めの時点で自己破産すれば、住み続けるよりも多くの老後資金を貯めることができる。これは事実なんだけど、「自己破産すれば儲かるから自己破産しよう」って奥さんを説得できる旦那が多数派だとは思えないだけど……

(3)団地はだめだよね?一戸建てが正義だよ
団地でも場所が良ければバブル時に一戸建てを買うより成功してるんですよね。
東京だと有名な桜上水団地は建て替えに成功してるし、多摩ニュータウンでも駅の近くなら建て替えて資産価値が大幅に向上している。
同じニュータウンでも大阪の千里なんかはバブル当時の価格には及ばないにせよ、立地が良いので新たに入ってくる住人は多いし、本書のような悲惨な状態にはなってない。
他にも開発された次期は遅かったけど、駅が近くて容積も余ってる光が丘団地なんかだと近隣の一戸建てに比べて良好な未来が残っているように見える。

主人公一家の誤算は多摩ニュータウンのバス便物件を選んじゃったことなんだけど、90年代は東京が西へ伸びていた次期だから、新宿に近い多摩ニュータウンを選んだのは特段愚かだとは思えない。むしろ、2000年代に起こった都心回帰・東京駅の復権のほうが”想定外”だった人は多いんではないだろうか。

そもそも主人公一家にしても、後数年早く”住宅すごろく”に参入して90年台前半にニュータウンを売って次の一戸建てを買っていたら、場所は良くて高尾下手すりゃ千葉とか山梨で本当に詰んでいたかもしれません。

(4)結局どうすれば幸せになれたの?
幸せは人それぞれですが、本書で幸せになっている人は①知的レベルが高くて②自分で物事を決めている人。だと思います。
それが誰と誰のことを指すかはあえて書きませんが、避けようがない事態は多いにしても、知的レベルが高く(情報を自分なりに咀嚼できてい)て自分で物事を決めた人はその中に幸せを見出しているように読めました。

こんなところですかね。
はっきり言うと本書の主人公のような人はいっぱいいるだろうけど、避けようがなかった不幸だと思います。

☆☆☆☆(☆4つ)

他のBlogの反応はこちら
http://blogs.yahoo.co.jp/konpeitou_06/53726244.html
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http://hide70.blog41.fc2.com/blog-entry-1602.html
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