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右派の語る”貧困”:貧困の光景 [社会]


貧困の光景 (新潮文庫)

貧困の光景 (新潮文庫)

  • 作者: 曽野 綾子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/08/28
  • メディア: 文庫



本書は二つの側面を持っている。
一つは、貧困国への支援を続けてきた人間が語る、支援と貧困国の現状についての生の声を記した書。
もう一つは、右派の立場から貧困について語った書。
どちらの視点も日本人が書いた類書は少なく、貴重な視点である。

【目次】
餌をくれない飼主
貧乏人の粉袋ほど穴が大きい
石入りご飯
美しき天然
できるだけ、できる時に
蛍の森
侵入区
サラエボ建材街道
まだしっとりと濡れている墓
骸骨の皮の微笑
神の招待席
学校に行けない理由
身を守る闘い
ワイパーは重機のつけまつげ
菊とワニ
ぶら下り現象
原生林の中の闘い
母子手帳は白蟻に喰われた
赤線の町にさす朝日
三百五十万円を運ぶ
一杯の水で生きる


本書の二つの側面のうち、援助の現場からの生の声については、「最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?」でも描かれているように、腐敗や国の環境のために必要な人に援助を届けるのも精一杯な絶望的な現状が良く描かれている。

アフリカの海に面した国は、その隣にある内陸国に常に、いろいろな形で嫌がらせをして金を儲けようとする週刊があるように見える。

とか、
貧しい社会では、ものも金も、移動することも保管することも容易ではない。だからものや金を日本で集めるところまでは簡単でも、それを間違いなく、必要としている人たちの手に渡そうとすると、そこには途方もない難しさが発生するのである。~(中略)~こうした問題は、つまりは元はと言えば、たった一つの危惧にかかっているのであった。途上国では少しでも地位のある人々の多くは、べっとりと汚職と腐敗に蝕まれていると言うことだった。

と言った状況はさんざん語り尽くされている。
そうした結果、
アフリカでは、子供に対するエイズ検査は行わない方が良い。HIVがプラスになると親はもうその子にミルクを与えない。どうせ死ぬ運命にある子供を養うより、少しでも生きる可能性のある子に食べさせないと、一人の子も残らないことになるのだ

と言った悲惨な現状になってしまう。
筆者は、こうした状況に陥る原因となるだらしない行政について、
もう長い間聞かされ続けてきた植民地支配の弊害につては、今さら言うまでもない。私に言わせれば、一つの国家が独立して三十年は試行錯誤が続いて当たり前だ。 しかし三十年、つまり一世代分の時間が経過したら、そこそこ目鼻がつかなければいけない。それが出来そうにないのだったら、つまり独立する資格がまだ無いのである。

と切って捨てている。
こうした表現はリベラルの人は絶対にしないが、紛れもない現実なのである。私は筆者のこの感覚は正しいと思うし、このことはもっと声を大にして主張されるべきだと思う。

反面、右派の立場から語る"貧困"については、賛否が分かれそうだ。
日本では、今や高校の卒業生のうち、専門学校・短大等を含めれば五割以上の若者達が大学へ進学するという。親に金がなくても、ほんとうにやる気があって成績もよければ、必ずどこかで奨学資金が受けられる。しかし世界の多くの土地では、子供たちは、小学校さえまともに卒業できない。親は子供が学校に行くより、労働をして生活を支えてくれることを期待する。

とか、
「貧困とは、その日、食べるものがない状態」を言う。従って日本には世界的なレベルで言うと一人も貧困な人がいない。

と言う表現は私でも引っかかる。現在の若者が苦しんでいるのは、筆者の世代のツケではないのかと問い詰めたくもなる。
全般的に、日本では格差格差とうるさいが、日本では飢えることはないではないか。と言った論調で書かれているので、日本国内に対する認識はひどく低レベルにありそうだ。

このように、世界の貧困を現場の声で知るには非常に優秀。
筆者の立ち位置から来る、日本の貧困を軽視する視点は非常に疑問。
そんな一冊である。

☆☆☆★(☆三つ半)

他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://blogs.yahoo.co.jp/tamurakenji2002/60279428.html
http://tarika.exblog.jp/12002290/
http://d.hatena.ne.jp/rararapocari/20071114/hinkon
http://syachou.exblog.jp/6172860
http://blogs.yahoo.co.jp/hiihuugoma/31535964.html

404blog not foundさんでもいつもの調子で評論されています。
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50837563.html

現場から来る圧倒的なパワーが本書の持ち味。
価値判断の入っていない箇所は素直に心に響きます。


本書を読んだ人は、こちらも併せて読んでみてほしい。

最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?

最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?

  • 作者: ポール・コリアー
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2008/06/26
  • メディア: 単行本



アフリカ 苦悩する大陸

アフリカ 苦悩する大陸

  • 作者: ロバート ゲスト
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2008/05
  • メディア: 単行本


私の書いたエントリはこちら
「最底辺の10億人」
http://book-sk.blog.so-net.ne.jp/2009-02-01
「アフリカ 苦悩する大陸」
http://book-sk.blog.so-net.ne.jp/2009-03-02






nice!(1)  コメント(3)  トラックバック(1) 
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コメント 3

Sanchai

ご紹介ありがとうございました。私も曽野綾子さんの別の著書を読んだことがあり、さすが途上国の貧困の現場をよく歩かれているなと感じたことがあります(アフリカ中心のようですけど)。どこかに寄稿されていたエッセイを寄せ集められたのかなとは思いますが、事例の数は非常に多いのですが、1つ1つの分析をもっと詳細にやってくれたらなと感じたのをよく覚えています。

ご紹介下さった本書も、単行本で出ていた時には読む気が起きなかったのですが、文庫化されているのであれば読んでみようかと思っています。
by Sanchai (2009-09-26 13:54) 

別冊編集人

TB恐縮です♪
参考図書も是非読んでみたいものです。
また御指導のほどを♪
by 別冊編集人 (2009-09-26 22:17) 

book-sk

>Sanchaiさん
コメントありがとうございます。

エッセイを寄せ集めた本書ですが、迫力は十分です。現場をよく知っている人だと言うことがひしひしと伝わりますね。
文庫化されて値段的にも書物の大きさ的にも読みやすくなっているのでオススメです。

>別冊編集人さん
コメントありがとうございます。

参考図書はアフリカの腐った現状がよくわかる一冊です。
これらを読むと援助の大変さがよくわかりますよ。
by book-sk (2009-09-26 23:10) 

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