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腐った組織でも愛せますか?:警官の血 [小説]


警官の血〈上〉 (新潮文庫)

警官の血〈上〉 (新潮文庫)

  • 作者: 佐々木 譲
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/12/24
  • メディア: 文庫



警官の血〈下〉 (新潮文庫)

警官の血〈下〉 (新潮文庫)

  • 作者: 佐々木 譲
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/12/24
  • メディア: 文庫



自分が大好きで選んだ会社。
仕事にも十分満足している。
それでも、その組織の汚い部分を目にすることがあったとき、今まで通りに愛着を持って忠誠を誓うことは出来るのだろうか?

本書は親子三代で警察に勤めることを選んだ男達と、それぞれの時代を描いた物語と言われることが多いが、愛した組織に裏切られることの物語でもある。

物語は終戦直後の1948年から始まり、2007年で終わる。
その間、主人公は祖父→父→子と移り変わり、職場も、戦後の駐在所から学生運動の左翼捜査、バブル崩壊後の経済事犯の捜査と時代を反映したものに変わってくる。

本書で描かれる主人公一家の原風景とも言うべき、警察へのあこがれは戦後の混乱期を谷中の駐在警官として過ごした祖父の代に築かれている。
祖父の仕事を見て父が、父が理想とした祖父の職場をみて子が警察を志願するのだが、残念なことに時代の変遷が激しく、理想とした原風景にたどり着くことはだんだんと難しくなってくる。

父の代では最後に祖父と同じ駐在警官になることが出来るが、周辺の環境はもはや過去と大きくずれていた。
この代に至っては、東京に駐在所はほとんど無くなり、自身も経済事犯の捜査員として職場人生を過ごすことになる。

こうしたあこがれと現実のギャップの中で、親子は警察の汚く腐った部分も多く目にすることになる。
祖父の代では押収品の禁制タバコの山分け程度だった汚職も、子の代では暴力団と癒着して大金を動かすまでになってくる。

理想と現実のギャップを感じ、組織の汚い部分を目にしたときにも、人は愛着と忠誠を失わずにいることは出来るのか?本書のラストはそうした葛藤に対して象徴的なシーンで終わっている。

同じ時期の直木賞にエントリされた「赤朽葉家の伝説」(こっちは女性三代のストーリー)と対比されることが多いが、本書の方が仕事・職場と密接につながっていることを感じる。

職業人の人なら、うーんとうなる良質なエンタテイメント作品と言えよう。

☆☆☆☆(☆四つ)

他のBlogの反応はこちら
(本書をポジティブに評価するエントリ)
http://blog.goo.ne.jp/yupasama44/e/6b4432f2e16d8460631805a6ec308d65
http://e-tsurezure.blog.so-net.ne.jp/2010-09-02
http://nhc.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-7e52.html
http://dorablue.blog51.fc2.com/blog-entry-3342.html
http://blog.livedoor.jp/sumomonohondana/archives/1513239.html
http://blog.goo.ne.jp/zhaiteng_1946/e/b0996574f0f516336a55d92279c6a0f6
話題作だけ合って、評判は上々。
本書が逃した直木賞を、その年に受賞したこの作品と合わせて読んで欲しい作品です。


赤朽葉家の伝説 (創元推理文庫)

赤朽葉家の伝説 (創元推理文庫)

  • 作者: 桜庭 一樹
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2010/09/18
  • メディア: 文庫







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コメント 2

すもも

こんばんは。はじめまして。
終戦後の人情と、時代とともにモラルが欠けていく様などは特に巧く表現されますよね。戦後を知ってるわけではありませんが、読後はなぜか戦後の祖父の代が懐かしくも感じた作品でした。
TB有難う御座いました^^
by すもも (2010-09-16 20:24) 

book-sk

>すももさん
コメントありがとうございます。

今の方が確実に終戦直後よりは良い時代なのですが、昔は昔でいいところがあったと思わせる作品ですよね。
それぞれの時代の雰囲気が良く出ている傑作だと思います。
by book-sk (2010-09-16 22:56) 

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